正しいことを言っているし、わかりやすく話しているつもりなのに、なぜか関心を持って聞いてもらえない。協力してもらえない。一方で、そんなに話し方は上手とは思えないのに、人に支持される人がいる。自分の何がいけないんだろう…?そんなふうに思うことありませんか?
説得力をつけたい。そう切実に思う方のために、今日は本当の意味での説得力とその身につけ方をお届けします。(ちなみに、本当の「説得力」とは、人の考えを無理に変えたり、こちらの意図に仕向けることではないですよ。人って誰かに説得されるのはイヤですよね?)
NHKの朝ドラ「おかえりモネ」のあるストーリーがとてもわかりやすかったので、まずそのストーリーをベースに書いてみようと思います(余談ですが、私、朝ドラをちゃんと観たのは、このドラマが初めてでした。)
説得力がないと言われたお天気キャスターのストーリー
ベテランお天気キャスターの後進として、お天気コーナーを担当することになった女性キャスター。仕事に真摯でキャリア志向の頑張り屋ですが、見た目は可愛らしく、ハッピーな、いるだけで周りが明るくなるようなキャラクター。そのせいか、SNSに「説得力がない」「前の人の方がいい」と書かれ落ち込みます。
専門的な気象をテーマにし説明をすれば、自分も知識があると思われ、説得力があると思われるのでは?と提案するのですが、ディレクターは「そういうことではないんだよね」という様子。
他のスタッフは不器用ながらも、プレゼンで「説得力がある」と高評価を得るのを見て、「自分はハッピーに生きてきて、つらい体験をしていないからできない」と悩みます。
それを聞いていた知人の女性が「それは違う。つらい思いはしなくて済むならしない方がいい。画面の向こうにあなたたちのように暮らせない人がいることも、考えて欲しい」と、涙ながらに伝えます。
お天気キャスターの女性は、「説得力」ってなんかちょっと分かった気がすると言い、翌日の天気では、霜が降りることで農作物に影響を受ける地方の方にいたわりと、天気回復の時期と共に励ましのメッセージを送ります。明らかに彼女のイメージが変わった瞬間でした。(かなりザッとまとめていますが、本質はあっているかと)
さて、このストーリーから、「説得力」はどうやって生まれるかを伝えていこうと思います。
説得力につながる2つのポイント
相手目線
彼女は「説得力がある」=「自分がすごいと思われること」に意識がいきがちでした。そうして信頼を得ようとし、努力していました。
彼女の努力も素晴らしかったのですが、画面の向こうの人たちがどんな様子、どんな気持ち、何を期待して、天気予報を聞いているか?そこに思いを馳せることができていなかったんですね。
それを思いやれるようになったことで、伝える内容が大きく変わりました。
これは私がリーダーになった時と同じで、最初は、若かったこともあり、リーダーにふさわしい人と思われるにはどうしたらいいか、ということばかり気にしていました。
でも、それが返って自信がないように映っていたのだと思います。
人と比較して、自分を偽らない
前任者はベテランのキャスターでした。代わればどうしても比較されます。他人のことなら「人それぞれ、良さがあるのだから」と心底思いますし、気軽に言えますが、自分のこととなれば、そう簡単には割り切れません。
そうなると、どうなるか?
相手が期待する理想像に寄せようとしてしまうのですよね。そうするとドンドン説得力がなくなります。
相手目線で考えることは大事。ですが、それはあなたらしさをつぶすことではないし、あなたが伝えたいことの本質を変えることではありません。
コロナの時、外国の首相たちのメッセージが記憶に残っている人もいるかと思います。その際、言われたのが、日本の首相のメッセージの説得力のなさでした。
プレゼンのテクニックの差はあるかもしれません。ですが、あの時、誰もが感じたのは、「自分の言葉で、心の底から必死に伝えようとしているかどうかの違い」だったのではないでしょうか?
体裁やどう思われるかを気にして言葉を選んでいるうちに、響かないメッセージになってしまうのです。
相手を変えようとしない
これは私が前職でも今でも伝えてきていることですが、人は説得されたくないものですよね。あなたも誰かに「説得される」のは気が進まないのでは?
「説得する」というと「相手の考えや行動を、自分が思う方に変えること」という印象があるかもしれませんが、そう思って接するとうまくいかないものです。なので、私は「説得する」という言葉を使いません。
人は、自分で気づいたことは、受け入れられるもの。特に、自分にメリットがあると分かれば、その行動は変わります。
相手を向き合い、相手にとってのメリットを伝えたり、なぜ、そうなのか?の根拠を丁寧に説明し不安を除いたり、理解を得ることで疑念を払い納得をしてもらう。といった努力が、結果的に「説得力」につながると思っています。
人は信じたい人の話を信じる
このドラマの「説得力」に関するストーリーで、もう1つ印象的なシーンがありました。
それは「人は信じたい人の話を信じる。信頼される人になれ」というベテランキャスターのセリフ。
情報が溢れる今の時代、確かに人は自分が信じたいことを事実だと思おうとしますし、同じ情報でも、誰が言うかで信じたり、信じなかったりします。
「〇〇さんが言うことだから、きっと大丈夫」そんなふうに思ったりしますよね。
そこにある信頼、どんなものかというと、話の正確性だけではなく、その人の真摯な態度や正直な物言いだったりしませんか?人は、その人の「あり方」を感じ取っているのですよね。
まとめ
人は誰でも説得されることを好まない。説得力とは、人の考えや行動を無理に変える力ではなく、相手の立場を思いやり、自分が思うことを、相手にわかるように、真摯で正直なあり方で伝えること。
あまり気負いせず、肩の力を抜いて頑張ってくださいね。