課題を解決する力・戦略思考

思いやりと戦略思考のコミュニケーション

あなたは「コミュニケーション能力が高い」という言葉に、どういうイメージを抱きますか?

一般的にはどんな方ともすぐに仲良くなれる外交的なイメージが浮かぶかもしれませんが、このサイトでお伝えしているのは、そうしたものではありません。何かを成し遂げたり、目的を達成したり、課題を解決する力としてのコミュニケーション能力です。

ビジネスのシーンに限らず、プライベートでも、自分のやりたいことを実現するために、協力を得ようと想いを伝える、働きかけるというのもそうしたことの1つでしょう(留学したいから、親にわかってもらおうとするとかね)。

特にビジネスにおいては、耳障りのいいことだけ言えばいいわけではありません。表面的に仲良くしていても、気まずくなることを恐れて、本質的なことに触れるのを避けてしまうようでは、成果を生み出したり、難しい局面を乗り越えていけるような関係性やチームワークは築けないですよね。

では、目的達成や課題解決のためのコミュニケーションにおいて何が大切なのか?

カギとなるのは、「思いやり」と「戦略思考」です。

思いやり

相手と同じ景色を見る

よく「相手の立場になって考える」といいますよね。「自分は相手の立場になって考えているのに、なぜか通じない。」そんな時、自分の立ち位置を振り返ってみてください。相手が向こう岸にいて、向かい合っていませんか?自分は自分の岸に立ったまま、対岸の相手に向かって伝えているイメージです。

「相手の立場に立つ」というのは、相手の岸に渡り、その人になり切って相手と同じ景色を見るイメージ。そうすることで初めて、相手からこちらがどんなふうに見えているか、どんな気持ちでいるかに気づけます。

こんなことがマニュアルには記載されているかもしれません。

・部門の専門用語は、他部署と話すときは、わかる言葉に置き換えて説明する
・新人には理解できたかどうか確認を取りながら丁寧に話す
・ミスが起きたときは、責任を追求するのではなく、どうすればいいかを話す

こうした具体的な行動がマニュアルとしてあるとわかりやすいですが、「なぜ、こういうことが大切なのか」の実感が伴っていないと、場面が変わるたびに、どうすればいいか聞かないとわからない、ということがおきます。相手の状況を理解しようと思いやれるようになれば、場面が変わるたびに細かな決まり事がなくても動けるようになります。

子供と話す時には、しゃがんで子供の目の高さに合わせますよね。それが大人同士になると、気づかないうちに、上から見下ろしたままで伝えていることがあるかもしれないのです。

ねぎらうということ

人は誰しも認めてもらいたいという気持ちがあります。だから、褒められればもちろん嬉しいですが、褒められるかどうかより、自分の努力をわかってくれているかどうかが信頼関係ややる気につながっていると感じます。

私自身の経験を振り返ってみても、成果を出せなかった時でも、そのプロセスに対して、大変だったね。と声をかけてもらえたときは、「この人は、わかってくれている」と嬉しかったですし、励みになったものです。

こうしたことも、テクニックとしてではなく、思いやりの1つですよね。

ありがとうを添える

「ありがとう」と言われると嬉しくなりませんか?私は嬉しいし、いい言葉だなと思うので、企業でマネジャーをしていた頃、依頼を引き受けてくれたとき、それが実行されたときなどはもちろん、ルーティンでも、何かを申し出てくれたときでも、ちょっとしたことでも、返事と一緒に「ありがとう」を添えるようにしていました。

例えば、何かを持ってきてくれたら「そこに置いてくれる。ありがとう。」 報告してくれたら「わかった。教えてくれて、ありがとう。」

挨拶がわりに「ありがとう」を添えるのを習慣にしていたのですが、あるとき、スタッフがこんなふうに言ってくれました。

「いつも、『ありがとう』って言ってくれますよね、それが嬉しくて。私、単純なんで、なんか頑張っちゃうんですよね」と。

こちらこそ、嬉しかったです。

戦略思考

急な依頼、前例のない企画、予算が欲しい、期限を伸ばす、期限を繰り上げるなど、相手にとって受け入れがたいことをリクエストや交渉をする場合、伝え方次第で結果が大きく変わります。プレッシャーも感じますよね。泣き落としやご機嫌とりといった方法ではなく、正攻法でありつつ、相手にとって受け取りやすい伝え方、段取りを考えて進めていきましょう。

受け取りやすい伝え方のポイント

1)目的と位置づけを明確にする

陥りがちなのは、受け入れてほしい事柄ばかりに意識が行きすぎること。全体の目的とこれから行おうとしていることの位置づけを、自分の中で一度整理しておきましょう。

2)OKをもらうために必要な条件、材料を揃える

どういう条件であれば相手がOKしやすいのか、ということを考えてみましょう。資料が必要であれば、揃えておくことも大切です。たとえば、リスクがあることなら、どんなリスクとリスクヘッジの方法があるのか?といったことも。

リクエストの内容もOKかNOかだけではなく、状況により選択肢が用意できるなら用意しておくのもいいですね。

3)全体の目的、各々の役割、価値を共有する

頼むことだけ、やってほしいことだけ伝えていると、人によってはなかなか動きませんし、いいアイディアをもらうこともできません。

難しいこと、影響力が大きいことほど、その全体の目的、相手が果たす役割、それによりもたらされる価値を共有することが良い結果につながります。

全体に対する自分の役割のつながりを意識でき、自分にとってどんな価値があるかを認識できると、行動につながりやすくなりますし、成果も出やすくなります。

4)伝え方を考える

伝える方法(メールか電話か、直接話すのか)、伝えるタイミング、メールの書き方など、手順も考慮しましょう。

ちなみに、私が気を付けていたのはこんなことです。

・人は空腹のときはイラつきがちなので、昼休み直前に声をかけない。(タイミングが合えば)昼食後のちょっと気持ちがゆったりしている時に声をかける。

・切り出しにくいからと、顔色を伺うように、長々前置きするとかえってイラつく人も少なくない。気が短い人の場合は、素早く本題に入る方がうまくいく。一見怖そうな人ほど、すぐ本題に入る方が良い結果になる傾向が強かったです。

・込み入ったことはメールに書いて送りつつ、併せて電話又は直接話をする機会を設ける。

・箇条書きにできることは箇条書きにする(文章がだらだらつながっていると見づらいですし、解釈の間違いも生まれやすいです)。

・無駄なく、短くできることはできる限り短く書く(恐ろしく忙しい人は長いと全部読んでいなかったりしますしね)

5)ロジカルに、エモーショナルに

伝わりやすさは、わかりやすさ。ロジカルであることが欠かせません。話のつながりに矛盾がなく、すんなり頭に入ることを心がけましょう。

とはいえ、ロジカルに徹しすぎて、事務的だったり、相手を追い詰めるような印象になってしまうと、気持ちよくYESを引き出すことはできません。

出だしや最後の締めくくりなど、ちょっとしたことでいいので、相手を思いやる言葉を添えたいですね。それだけで気持ちが和むものです。

PS,ユーモアも忘れずに

思いやりと戦略思考についてお伝えしました。ただ、日々、忙しく過ごしていると忘れがちなのは「ユーモア」を感じるゆとり。自分も他の人もホッとさせてくれるちょっとしたユーモアも忘れずにいたいですね。